高校A部門[7/28開催] ◇高校B部門[7/29開催]

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A部門 熾烈な県大会への争い 7校中3校が栄光の切符を獲得!
 
なにしろ、暑い...
腹が立つほど暑いのである。

管理人は基本的に夏が好きではない。
であるにもかかわらず、夏のイベントは好きなので困っている。

高校野球も、吹奏楽のコンクールも、夏にやってこそ、という気持ちは存分に持ち合わせてはいる。

でも、暑い...

しかたなく、カメラを空に向け、この暑さがどれほど写真に反映されるか、試してみた。

...よくわからん......

会場である文化会館まで歩くだけで、かなりの発汗を促され、高校A部門の開場を文化会館で待つ間も尋常でなく暑いため、さらに発汗する。
まさしく天然サウナ状態。

とにかく、関係者の方々の健康状態が気になるほどの暑さなのであった。

さて、あまりの暑さで開場前はとても音楽を聴くという精神状態にはなれなかったが、一歩会場に入ると、毎年のことながら「おぉ、これからコンクールかぁ」という高揚感に包まれる。
(たぶん、冷房が効いているせいもあるかと)
取材に来ただけでこうなるわけだから、実際に演奏する人たちはいかばかりか。

熱気は開場を待つ人たちが長蛇の列を形成していることからも存分に窺い知れる。
 
  

3つ目の椅子はどこだ?
 
出場校は次の7校。
プログラムの順に記すと、慶應藤沢・湘南・日大藤沢・北陵・茅ヶ崎・湘南学園・藤沢西。

部員・保護者・指導者・ファンといった各層から事前にどこが県大会に行くと思うかを尋ねたりもしたが、その結果は混沌。
抜け出たところはなく、コンクールだから当たり前だが、その時のデキで県大会出場チームも決まるという雰囲気。

こういう時は聴き手も緊張する。

詳しくは後述するが、その中で2番目に登場した湘南と最後に登場した藤沢西の2校はまだかなり余力を残していると思わせる演奏で、聴き終った瞬間、決まったかと思われた。

問題は3校目であった。
管理人のシロート採点表では北陵と茅ヶ崎が同点で並んでいる。

実際の発表でも北陵・茅ヶ崎は金賞である。
これは3つ目の椅子の行方が難しい...
 

絶叫! つにいその場面を捉えました
 
毎年のことながら、コンクールでの金賞・銀賞・銅賞の発表では、演奏を終えた吹奏楽部員たちが客席に並び、自校の成績発表の際は“阿鼻叫喚”と形容したくなる絶叫となる。

さらに、今回のように3校が県大会への切符を掴むという状況で、4校が金賞というひじょうに微妙なケースでは、県大会出場校が決定する瞬間、リミッターを振り切ったような声があがる。

管理人はその瞬間の音声を捉え、ここに初公開します。
(演奏ではないので、許してね)

その瞬間の絶叫> ※約1分です。万一のため、PCのボリュームはちょっと下げめでお願いします

どれくらいの興奮か、伝われば幸いです。

衝撃的だった湘南の演奏
 
管理人の取材メモの湘南高校の欄はびっしりと文字が埋まっている。

まず、課題曲が『吹奏楽のためのスケルツォ第2番≪夏≫』(鹿野草平・作曲)というのは全県で3校だけしか選ばなかった難曲であった。
しかしながら、この選択は湘南高校にとってはある意味当然のものだったのかもしれない。

現代音楽的作品で、もし管理人が5つの課題曲を聴いて、湘南高校が演奏するのに相応しいものを選べば、やはりこの曲になったはずだ。
というのも、指揮者の小澤篤さんがいかにもやりたそうなテイストの曲だからだ。
実際、終了後のインタビューでも「生徒が小澤はこういうのが好きそうだ、というのがわかっていて、割とすんなり決まりました」と語られていた。

しかし、ひじょうに高く保たれた緊張感、チューバのソロを起点とする他の楽器との連動、ドラムセットの特にスネアの音から心の中の不安を掻き立てられるような音粒が広がる感覚は、ちょっとゾクっとさせるもので、この曲を一般的な高校がチャレンジするのはかなり困難であろうと推察された。

吹奏楽連盟の大英断だったのかもしれない...

さらに、自由曲の『中国の不思議な役人』も小澤ワールドであった。
やはり現代音楽的雰囲気をふんだんに盛り込んだ曲で、ピッチ・シンクロ性がともに安定している中で、部員たちは「今、自分が演奏している箇所は全体の中でこういう役割がある」という高い解釈力を伴っていると感じられる演奏であった。

ダイナミックスの上げ下げ、強弱感のメリハリ、個々の楽器の特性(特にトロンボーンにそれを感じた)を生かした演奏は、まだまだ伸びる余地もありそう。

小澤さんに県大会での抱負をお尋ねすると

「課題曲と自由曲との色の違いをどうやって出すか、ですね。大きな表現をしつつも、基礎の部分こそしっかりとやっていきたいです」

とのこと。
この2曲の選曲にはギャンブル的要素もあったと語る小澤さんだが、“わくわく ”を感じさせてくれる演奏で、県大会でのさらなる飛躍を望みたい。

いやぁ、とても楽しかったです!
それと、演奏後の部員たちの立ち姿もなかなかきれいでした。
そういうことも大切ですね。
 
タイトル『危険なふたり』・・・県大会への出場を決めた藤沢西の指揮者・丸山透先生(左)と湘南の指揮者・小澤篤さん
 
余裕ある演奏だった藤沢西 高い解釈力はどこまで伸びるか
 
6月に藤沢西へ取材に行かせてもらった際(詳しくは こちら)、既に芯に相当する部分はほぼ出来ている、という感じはしていた。
指揮者が丸山先生で、自由曲がホルジンガー作品だったので、敢えて厳しめに聴いてはいたつもりだったが、コンクール1ケ月前でのデキとしてはかなりの仕上がりだったのだ。

あれからひと月。
藤沢西の部員たちのスキルや曲への解釈力がどこまで伸びたのかを楽しみにしていたが、それは想像を超えていた。

自信装置とでも呼べるものを埋め込まれたかのように、個々の部員はとても落ち着いて、力一杯というより、他者の演奏を感じ取って、自らの音量をコントロールし、全体のバランスを気遣っていた。

そうした精神的な余裕があるからこそ、場面転換の際のブレイクはキレもよく、ダイナミクスのドライブ感やシンクロ性の高さも申し分なかった。

本番のステージでこうした演奏ができるためには、いくつかの準備段階は当然必要だったはずだが、その一歩目は「生徒たちが私のことをウェルカムしてくれたことでしょう」と語る丸山先生。

数日前のホール練習で、音が出すぎるきらいがあったため、部員にそれぞれの楽譜にボリュームを書かせ、「気持ちとしては40%くらいの音量で」抑えたとのこと。

「県大会に向けて、楽しく演奏できるように仕上げていきたいですね。湘南とともに、結果重視というより、いかに演奏のチャンスを楽しめるか、を大切にしてゆこうと思います。」

思い起こせば、昨秋、丸山先生の前任校である北陵と、小澤さん率いる湘南はアンサンブルコンテストの合同予選会を開催した。
その際、小澤さんが「プロの音楽家は日頃はそりゃ必死に練習します。でも、いざ本番という時は、薄笑いを浮かべて、やっとお客さんに聴いてもらえる日が来たんだと思うものだ」と発言したことに、丸山先生は目からウロコが落ちる思いだったそうだ。

その二人が今、こうして並んでインタビューを受けるのはけして偶然ではないだろう。

藤沢西高校吹奏楽部が新たな黄金期に至ることは間違いなかろう。
さらなる進化形を見守らせてもらいたいと願う。

コンクールの結果
 
第11回湘南吹奏楽コンクール高校A部門の審査結果は以下の通り[演奏順]。

@慶應藤沢 銀賞 課題曲「オーディナリーマーチ」(高橋宏樹作曲) 自由曲「民衆を導く自由の女神」(樽屋雅徳作曲)

A湘南 金賞(県大会出場) 課題曲「吹奏楽のためのスケルツォ第2番≪夏≫」(鹿野草平作曲) 自由曲「中国の不思議な役人」(バルトーク作曲)

B日大藤沢 銀賞
 課題曲「迷走するサラバンド」(広瀬正憲作曲) 自由曲「イーストコーストの風景より U.キャッツキル山脈 V.ニューヨーク」(N.ヘス作曲)


C北陵 金賞
 課題曲「迷走するサラバンド」(広瀬正憲作曲) 自由曲「新世界の踊り」(M.エレビー作曲)


D茅ヶ崎 金賞(県大会出場)
 課題曲「吹奏楽のための民謡 うちなーのてぃだ」(長野雄行作曲) 自由曲「トリティコ」(V.ネリベル作曲)


E湘南学園 銀賞
 課題曲「吹奏楽のための民謡 うちなーのてぃだ」(長野雄行作曲) 自由曲「喜歌劇 伯爵夫人マリツァ セレクション」(E.カールマン作曲)


F藤沢西 金賞(県大会出場)
 課題曲「汐風のマーチ」 自由曲「スクーティン・オン・ハードロック〜三つの即興的ジャズ風舞曲」(D.R.ホルジンガー作曲)


県大会へは湘南・茅ヶ崎・藤沢西の3校が出場することとなりました。
出場チームの皆さん、持てる力を発揮して、是非このチャンスを堪能してきてくださいね。

北陵高校・茅ヶ崎高校のみなさんへ
 
末筆となりますが、管理人を感動させてくれた北陵高校・茅ヶ崎高校にもエールを送りたいと思います。

<北陵高校のみなさんへ>
金管楽器に「タメ」(と呼べばよいのでしょうか?)があり、音粒が締まった演奏だったと思います。
特に自由曲でサックス、オーボエのソロや、金管の音量を抑えた演奏、地の底から這い上がって来るような絵画的演奏は素晴らしかったと思います。
最後の方はすごく“乗っている”ように感じ、打楽器の歯切れのよさを堪能しました。
今回は県大会に届かず、残念ではありますが、是非再挑戦して欲しいと願いします。
また遊びに行かせてくださいね。

<茅ヶ崎高校のみなさんへ>
正直に告白すると、課題曲の演奏が始まった時、ちょっとこぢんまりしているなぁ、と。
人数が少ないので致し方ないかと思っていましたが、自由曲になって二人加わり、シンクロ性が高いだけでなく、強弱の出し入れが効いたイメージに変わりました。
ティンパニーをステージの左右に配したステレオ感、低音を丁寧に響かせようとする意志、シンクロ性の高い打・管による緊張感のある演奏、サックスのソロが音の中に溶け込むようなぞくぞく感。
最後の残響音も素晴らしく、さすが茅ヶ崎と思わせるものでした。
県大会での尚一層の飛躍を期待します。


明日のB部門も楽しみにしています。
出場者の皆さん、ベストパフォーマンスをお願いします!

この“ひと夏の経験”が皆さんを大きく成長させると信じて、音楽を、ステージを楽しんでください。

 
前後を仕事に挟まれ、というか、ちょいとムリをして時間をこじ開けた高校B部門。
それでも、どうしても聴きたいと思ってやって来た。

天気は雨模様。
このところ、あまりに暑かったため、ちょうどよかったのかもしれない。

少なくとも管理人にとって、灼熱の太陽よりは助かった。
いつのまにやら決勝戦を迎えていた高校野球神奈川予選(横浜−東海大相模)もこの雨で延期となった。

そういう日として記憶に残るかもしれない...

8チーム中1枚のみの県大会切符は寒川高校が獲得
 
B部門は35人までの編成だということは知っているが、何人以上でなければならないか、ということは知らない。
かつては6人で出てきたところもあるし、今回も茅ヶ崎8人、藤沢西9人という小編成バンドもあった。
人数は少なくても、お客さんがいて、審査してもらうステージに立つというのは極めて貴重な経験となろう。

管理人はこうした小編成(その多くは吹奏楽初心者だ!)で参加した子たちが、やがてエースになるのかもしれない、という思いで聴かせてもらった。
実際、高校に入って初めて楽器に触った子が県大会や関東大会に行った例を少なからず知ってもいるしね。

さて、この日は8チームが登場。
それぞれの思い、それぞれの緊張感を抱えてステージに乗ったことだろう。

管理人がB部門を愛してやまないのは、A部門よりもそれが剥き出しになっているからなのかもしれない。
課題曲のない一発勝負だからかもしれない。
とにかく、彼らが愛しいのである。

今年はルールの改正(詳しくは こちら)で、A部門・B部門の両方に出場の学校(今年は北陵・茅ヶ崎・藤沢西がこれに相当する)のBバンドはどれほど素敵な演奏をしても県大会には出ることができない。

しかも来年は両部門に出ることそのものも難しくなるとの見解もあり、もしそれが実行されると、管理人の楽しみが著しく減るだけでなく、経験値の少ない子たちが貴重な経験を積む機会がなくなってしまい、実に惜しい。
何とか考え直して欲しいなぁ...


◇審査結果

@鶴嶺 金賞 喜歌劇「メリー・ウィドウ」セレクション(F.レハール作曲)
 
A藤沢総合 銀賞 バレエ音楽「青銅の騎士」より(R.M.グリエール作曲)

B北陵 金賞 勇敢な飛行(J.スウェアリンジン作曲)


C茅ヶ崎 銀賞 マジェスティア(J.スウェアリンジン作曲)


D西浜 銀賞 ヘリオスフィア(坂井貴祐作曲)


E藤沢西 銅賞 カンタベリーコラール〜ロバートとアニーのために(J.ヴァン=デル=ロースト作曲)


Fアレセイア湘南 銅賞 たなばた(酒井格作曲)


G寒川 金賞[県大会出場] バレエ音楽「青銅の騎士」より U,Z,\,V(R.M.グリエール作曲)


 
個人的な感想を述べさせてもらうと、鶴嶺高校の演奏は管理人のストライクゾーンにピシッと嵌るものだった。
ピッチは安定し、管楽器は打楽器とのシンクロ性がひじょうに高く、音量を抑えた演奏では音色が優しく、聴く者に郷愁を感じさせる演奏。
さらには終盤のダイナミクスが上昇するところはドラマチックであり、楽曲への深い理解度が感じられた。
県大会に出ても、かなり戦える力があるように思え、1チームしか県大会へ行けないせつなさを感じた。

また、成績発表後、楽屋付近で寒川高校部員に対して他校の先生・部員が「とてもいい演奏だった。県大会、頑張ってきてね。」とエールを送る場面では、思わずもらい泣きしそうであった。

そう。
寒川高校は県大会に行けなかった学校の想いも背負って演奏しなければならない。
それをプレッシャーと感じず、励みにして、素晴らしい演奏をしてきてもらいたい。

寒川高校への熱い期待
 
管理人はこれまで寒川高校の演奏に涙を禁じえなくなった場面が幾度かある。

それは勿論、こちら側の精神状態にも左右されるわけだが、少なくとも大人が音楽を聴いて「泣く」にはそれなりの仕掛けや技量、そして音楽を聴く人の心に届けようという想いが不可欠であろう。

音楽の力に震憾する、というのを体感させてくれたのは、管理人の中では間違いなく寒川高校吹奏楽部であり、それを指導してきた岡田寛昭さんであった。
だから、管理人は寒川高校が真剣に準備をし、「この一曲に懸ける」という気持ちで臨むコンクールB部門は何としても聴きたいわけである。

そして、今年も本当に素晴らしい演奏であった。

打楽器と低音部に重厚な人員配置を施し、演奏全体の安定感は抜群であった。
さらに、岡田さんとコントラバスが演奏中に交わす強烈なアイコンタクト。
そうした気配りの一つ一つが、岡田さんの目指す『空間支配』へといざなう。
劇的なステレオ感であった。

部長の山添詩織さん(打楽器)は「練習通りにほぼ出来たことが嬉しかったです。県大会へも頑張って練習したことを力にして、また練習通りに演奏できれば、と思います」と語ってくれた。

演奏後、岡田さんに今年テーマにしていることを訊いてみた。
「音の性質、つまり、音の行きたがっている方向や長さといったものをしっかり掴む、ということですね。まだ半分もできていませんが。」

管理人「寒川の演奏を聴くと、音が上へ抜けようとする意図を感じますが、それは聴き間違いではありませんか?」
岡田さん「ええ。うちでは毎日コールユーブンゲンやコンコーネといった合唱用教材を使って歌う練習をしています。それは音を上方に届かせるための練習ですから。」

そういうものなのか...
ひたすら感心する管理人であった。

管理人「県大会に向けて、強化したいところはどこですか?」
岡田さん「生徒たちのメンタル面をもっと強くしたいということと、弱奏部をどれほどしっかり出来るか、ということです。強く吹く所は何とでもなる、と言えば言い過ぎかもしれませんが。」

管理人「岡田さんは編曲もされますね。これは一旦自分が編曲して、自分というフィルターを通すことで、より高い解釈を生徒にも与えるということですか?」
岡田さん「勿論そういう意味もありますが、オーケストラ用のものは編曲することが多いです。うちには初心者の子もいますし、もとの譜面を渡したらたいへんなことになりますから。吹奏楽用に書かれた曲はアレンジすることはまずないですよ。」

にしても、忙しい中、編曲するというのは強い意志や音楽と寒川吹奏楽部に対する熱い想いもなければ不可能なことだろう。
そうしたことを折に触れ、見聞きしているので、管理人は寒川高校を応援し続けている。

さらなる高みへ。
県大会、期待しています。
 
  
  
写真は終了直後の岡田さんと、この春の定期演奏会リハーサル風景のものです